はじめに

鳥居龍蔵像このホームページは、日本人類学・民族学の先覚者鳥居龍蔵博士(1870明治3年〜1953昭和28年)の学問世界を紹介するものです。

鳥居は、1895明治28年の遼東半島の調査以来、大正、昭和と半世紀にわたり、台湾・西南中国・朝鮮半島・旧満州・モンゴル・東部シベリア・樺太・千島列島、南米など広範囲におよぶ大調査を敢行したわが国の人類学・民族学フィールドワークの先覚者です。調査の内容は、自然人類学・民族学から考古学・民俗学・歴史学と多岐にわたっています。真のアジア文化を求め、その基層と広がりを探し、未踏の鉱床を求めてアジアを走破した壮絶な生涯を送ります。

鳥居の業績については、自然人類学・文化人類学・考古学・歴史学を包括的にカバーし、わが国の日本人類学の道筋をつけた研究者と位置づける泉靖一の評価、戦後に唱えられた岡正雄の「日本民族複合起源論」、江上波夫の「騎馬民族説」、中尾佐助の「照葉樹林文化論」の三大仮説が、鳥居の着想にそうものだったという大林太良の評価などが注目されます。論考の多くが欧文で執筆されることもあり、その調査と研究は欧米学界で注目され、わが国最初の国際派人類学者として評価を受けることになります。

さて、鳥居は、当時珍しかったカメラを日本では初めて野外調査に携行し資料収集とあわせて膨大な記録写真を遺しました。東京大学には、鳥居が26年間(1893明治26年〜1924大正13年)在職した東大時代に行った調査で撮影した写真記録があります。その原板は永らく東京大学理学部人類学教室に保管された後、東京大学総合研究資料館(現総合研究博物館)に移管され、そこで鳥居写真が蘇ることになります。

それが、1988昭和63年度・1989平成元年度文部省科学研究費補助金総合研究(A)の交付を受け実施された、「鳥居龍蔵博士撮影の日本周辺諸民族写真・乾板の(緊急を要する)再生・保存・照合」というタイトルのプロジェクトであります。それによって長らく忘れ去られていた鳥居写真が蘇ることになります。プロジェクトの成果が、1990平成2年に発表されます。それが、鳥居龍蔵写真資料研究会編『東京大学総合研究資料館所蔵鳥居龍蔵博士撮影写真資料カタログ』東京大学総合研究資料館標本資料報告第18-21号です。

本ホームページは、その4部作に収録される写真資料ならびに解説・論文を中心に他の関連資料も収集してデジタル化し、「鳥居龍蔵とその世界」を広く社会一般に向けて発信し、鳥居龍蔵博士と人類学と民族学に関する理解と関心を喚起することを目的としています